フィリピンの語学学校と大学の違いは自主性。デラサール、フィリピン大学で感じた違いはヒト。バギオの語学学校JIC、マニラの大学で勉強している大学生の体験談が興味深い。貧困問題やコミュニティ開発に興味がある大学生必見!
フィリピンの大学と語学学校の違い
初めてお会いしたのがバギオの語学学校JIC。2015年の4月だから5ヶ月前ですね。
あの時は、バギオの語学学校JICのセミスパルタ校舎の感想を話しましたね。マイペースで勉強できるから、自分で勉強できる人にはJICはオススメだと思います。
その後、私立のデラサール大学と国立のUPを経験したんですよね。
はい。デラサールで3ヶ月勉強してから、UPに来ました。1か月ちょっと経ちました。
バギオの語学学校からマニラのデラサール大学に来て、どんな違いがありました?
まず気候です。バギオは避暑地なので過ごしやすいです。長袖でちょうど良くて、エアコンなしで快適に勉強できるんですけど、マニラは暑かったです。マニラに来たのが一番暑い時期で、本当に同じ国なのかなって感じました。あと、デラサール大学があるタフトアベニューはあまり治安の良いところではないので、夜は出ないようにしていました。
バギオとマニラは全然違いますよね。
はい。あと、環境の変化はもちろんですが、やっぱり語学学校と大学って全然違います。自分の意見なんですけど、語学学校って企業だなってすごく思いました。お金を払ってサービスを受けてるお客さまって感じ。環境もホテルとレストランと勉強する施設が一緒になってて、すべてが用意されてる。
JICバギオは韓国経営ですけど、スピーキングを伸ばしたいって気持ちは日本人も韓国人の生徒も一緒なんです。マンツーマンの授業もありますし、みんな話したいから、英語を話す機会が充分にある。先生もお客さんの私たちに良いサービスを提供してくれる。でも、デラサール大学に来て感じたのは、自分から行かないと何も得られないってことです。
語学留学と大学留学は全然違います。フィリピン留学って、途上国のフィリピンに来るので、勇気を出して壁を越えなきゃいけないと思うんです。けど、語学学校から大学に行くのもかなりハードルが高いです。またもう一回勇気を出さなきゃいけない。すごく感じています。
大学でも要求したら応えてくれます。ただ、1クラスが20~30人くらいで、先生はみんなが分かるように説明するので、分からなくても個別で教えてくれるわけじゃないです。質問したらもちろん答えてくれるんですけど。授業はマンツーマンではないですから。
日本の大学でも同じですよね。グループだとどんどん進んでいってしまいますもんね。
語学学校だったら、マンツーマンなので、生徒にあわせて教えてくれますけど、大学はちゃんと言わないと、流されていきます。
ちゃんと主張できたんですか?
最初のほうは全然できなくて…。日本人にありがちなんですが、グーグル先生に聞いてました…。
自分で調べちゃうんですね。
デラサール大学はお金持ちのボンボンが多い
デラサール大学はどんな学校なんですか?
デラサールは日本の慶應大学、早稲田大学みたいな大学で、私立大学でフィリピンではほぼトップの大学でお金持ちが集まるんです。
エリート校?
そうです。例えば、20人くらいのクラスだと、5人くらいタガログ語(フィリピンの現地語)を話せない生徒がいます。英語を話すのがお金持ちの権力の誇示みたいで、英語しか喋れない子もいます。みんなMacBookを持っていて、携帯プラスiPadを持ってて、日本人よりもお金持ち。一人っ子のボンボンも多くて、自分に自信があって、人柄としては冷たい人が多かったかな。まあ人によるんですけど。
グループワークが多いんですけど、友人が「このグループに入れてもらえる?」って言ったら、「ここはもうグループできてるから別のところ行って」って断られてました。デラサールでは結構苦い経験もしました…。
フィリピンって中学校がないんです。小学校を卒業したら、4年間高校があって、大学なんですよ。だからフィリピンの大学生は16歳とかで2歳年下なんですよ。すごく若いんです。
大学1年生が16歳なんですね。若いのに優秀なんですか?
優秀…、そうですね。それで、自分の英語力も自信がなくて、最初は分からないことがあっても、恥ずかしくて聞けなかったんです。だけど、自分から聞かないと本当に何も得られないんです。そこが語学学校と大学の違いです。
でもだんだん慣れて、聞けるようになったんですか?
そうですね。
デラサール大学では何を専攻してたんですか?
授業は3つ取っていて、1つがカナダの先生で、もう1つがなぜか日本人の先生、3つ目がフィリピン人の先生でした。カナダの先生からはコミュニティ開発について学んでいて、日本人の先生からはグローバリゼーションから引き起こされる問題についてで、フィリピンの先生からは英語で小論文を書く基本みたいなのを教えてもらっていました。デラサールの3か月では、語学学校とは違う勉強ができました。
もちろん英語力も上がるわけですよね?
そうですね、かなり。語学学校では英語を教わるじゃないですか。語学学校の時は、先生との相談して課題を決めていたんです。自分で買ってきた教材をもとに、エッセイを書いたり、プレゼンしたりして。
でも、大学だと相談なしに先生からどんどん要求される。これを次までに読んできてとか、これをレポート、プレゼンしてほしいとか。全然違いました。英語はできて当たり前なので、20ページくらいの論文を次の授業までに読んで来いって言われても、最初は、うわ…って感じでした。
でも慣れちゃうんですか?
そうですね。最初は単語を調べて1ページ理解するのに30分くらいかかってました。でも、専門用語が分かるようになってくるんです。表現の方法も結構似てるんですよね。リーディングのスピードも上がってきて、結果的に、3つの授業どれも最高の評価をもらえました。
語学学校の時、授業をカスタマイズして自分の専門分野についてマンツーマンで英語を学んでましたよね。その後、デラサールで同じ専門分野を学んでるでしょ。内容はマッチしてるの?
リンクしてます。語学学校で使ってた教材は国連が出しているレポートだったんですよ。人類が持っているすべての課題、貧困や教育の問題だったので。基本的に大学で学んでいるのも同じです。例えば、コミュニティ開発にしても、コミュニティが持っている脆弱性であったり貧困の問題だったりするので、内容はかなり関連してます。
フィリピン大学(UP)は貧困出身が多い
UPは全然違ったんですか?
雰囲気は全然違いました。学部とかクラス、もちろん人によると思うんですけど、自分はソーシャルワーク、社会福祉の授業とコミュニティ開発の授業を取ってるんですけど、それが1つの同じような学部なんですよ。
その学部は、UPの中でも比較的優しくて、助け合いの精神がある子が多いみたいです。貧困出身の子がすごく多いので、自分の家族が抱えている問題を解決したい子が多い。だから、日本人にも、「いま先生がタガログ語でこういうこと言ってたんだよ」って教えてくれる子がなんとなく多い。
学部によって違うんですか?
らしいです。UPでも、経済学部、経営学部は結構お金持ちが多い。
なるほど、ビジネスに興味ある人のほうがお金持ちが多く、貧困問題とか専攻する人は貧困な人が多いと。
らしいですね、比較的に。
自分の専攻では、良い人たち恵まれたと。
はい。生徒だけでなく授業も違います。デラサールだとほぼ100%英語で授業が行われていて、先生もほぼすべて英語で話しますし、生徒のディスカッションもプレゼンも全部英語なんです。だから、英語をしっかり勉強したい人だとデラサールのほうが良いかもしれないです。
自分もまず英語力を鍛えたかったのでデラサールに3か月間通ってから、UPに移りました。内容的にはUPの学問の方が興味があったんですが、授業によってはタガログ語で行われるらしいので、やっぱり人との繋がりが大事になる、それはグーグル先生に聞いても分からないので。
コミュニティ開発って授業は両方で取ってるんでしょ?
そうですね。でも、デラサールの時はカナダの先生だったんですけど、UPではフィリピンの先生なんです。フィリピンの先生は昔ソーシャルワーカーとして実際に貧困地域の問題を解決しようとされてたので、ちょっと思いが違う印象ですね。
面白いですね。授業の課題とかは?
課題は、日本の学校よりリーディングが多い印象はあります。授業はもっとインタラクティブで、先生が一方的に話すのではなく、先生が話してるのに手を挙げて生徒が質問したり。デラサールでもUPでもインタラクティブですね。
日本人よりもフィリピン人の方が頭が良いというわけでなくて、日本人って良い質問を考えようとしちゃうところがあると思います。フィリピン人は大したことは言っていなかったりするんですけど、疑問に思ったらすぐ聞く。
1回目のクオリティは低いですよね。だけど、繰り返すことで洗練されていくこともあるからね。
あと、デラサールの時は、結果的に授業の成績はよかったんですけど、ちょっと悔いが残る部分があって、全然フィリピン人の友達ができなかったんですよ。それが語学学校から大学の壁を越えられなかった部分なんです。
周りの生徒はフィリピン人ばっかりだったんでしょ?日本人同士でつるんじゃったの?
日本人も少しはいるので、確かにつるんじゃう時もあります。ただフィリピン人もフィリピン人同士の方が話しやすいじゃないですか、休み時間だと英語よりタガログ語の方がもっとカジュアルに話せるし。そういうのもきっとあったと思うんですよ。
語学学校だったらみんな英語を勉強しに来ているので、別の国の人と英語で話そうとするんです。でも、大学では、生徒は外国人と話すことにモチベーションがないんですよね。だから日本のアニメ好きの子としか話せなかったです。フィリピン人同士で楽しんでる子が多いので、そこに入るのは結構ハードルが高い。デラサールの3か月間は、その壁を見せつけられました。
UPではフィリピン人と積極的に交流したいんですか?
そうなんです。UPでの課題はそれなんです。いまは授業も結構楽しいですし、授業前や終わりは絶対話しかけようって決めてます。授業中も分からないことがあったらすぐ聞く。聞いたらすぐに教えてくれるので。
あと、デラサールには寮がないんですけど、フィリピン大学は、大学内にインターナショナルセンターという留学生向けの寮があるんです。
大学の寮に入ってるんですか?
迷ったんですけど、大学の寮ではなく、フィリピンの人が経営してる寮に住んでます。ドイツ人が4人と韓国人が3人いるんですけど、あとはフィリピン人なんです。UPの学生もいるので、寮でもできるだけ話しかけようって。フィリピン人の友達を作ることが、UPでの目標なんです。
残り期間はまだ結構あるでしょ。UPは延長したんですよね?
そうなんですよ。2月までです。
コミュニティ開発を学ぶため、もっと英語力をあげたい
いろいろ環境を変えながら英語学習をしてるんですね。語学学校の時にめっちゃ英語力上がったって言ってたでしょ。デラサール大学でも英語力が上がった?
リーディングは上がったと思います。ただ、友達がいなくて話す機会がなかったので、スピーキングはそんなに伸びていないです。でも、文献を読むのはかなり早くなりました。
こんなのありえないと思ってたような分量も読めるようになってきたんですね。
そうですね。
で、今も英語の勉強になってるんですね。
そうですね、今もかなり。
いま英語力で改善したいことは?
フィリピンに来た目的の1つでもあるんですけど、コミュニティ開発の学問にすごく興味があるんです。それを勉強するためにフィリピン人の先生や現地に住む先生、生徒ともっと深くディスカッションしたいです。
なぜかというと、日本でも貧困問題を勉強していたので、国連のレポートを読んで、国単位のデータで分析をすることが多かったんです。でも、データに入らない人もいるんですよね。ある大学教授が、昔シエラレオでお仕事をされていたんです。シエラレオネってアフリカの国なんですけど、まだデータがないんですよ。だからGDPの最下位になるのが目標だって言ってて、すごくショックで、そういう価値があるんだって思って。
データがとれてない国があるんですね。
そうなんですよ。フィリピンでも出生届を出されていない子供がたくさんいるんですよ。そういう子供って必死に生きてるのに、生きているのを国が認めていなくて、もちろん国連のデータにも載ってない。データから見えない事実をフィリピンに来てすごく感じました。でも、コミュニティ単位でしか、国連とかでは調査できないじゃないですか。
コミュニティ・ディベロップメントっていうコミュニティ開発の学問にすごく関心があるんです。論文を通してじゃなくて、実際に地域に行ってそこに住んでる人たちと深い意見交換ができるくらいの英語力を身につけて帰りたいと思っています。
まだ難しいの?
そうですね。聞きたい質問があっても、それがうまく伝えられない。深くなればなるほど難しい。最初はイエスかノー・ポジティブがネガティブか、おいしい?って言われてイエスかノーかとかグッドがバッドかで伝わりますけど、細かいところになっていくと、なかなか伝わらないんです。そこをしっかり磨いていきたいなと思います。
目的が明確でいいですね。僕は日常会話しかやってないけど、浅い日常会話はずっと喋ってればある程度はできるようになるでしょ。だから、若い大学生がそうやって明確な目的を持つことは素晴らしいと思う。
それがまた語学学校と大学の違いですね。語学学校はスピーキングを伸ばして楽しい会話ができるレベルまでって感じ。語学学校は2か月だけだったんですけど、もう飽和してて、これ以上ここにいて英語が伸びるのかなって感覚はありました。でも、大学に入ったら伸びしろいっぱいで、やることいっぱい。本当によかったと思ってます。
(2015年9月10日(木)マニラのクバオのレストランにて)
編集後記
マニラに行くたびに創価大学の大学生に会ってます。山崎さんと会うのは今回で3回目。毎回状況が変わって違う課題が見つかってるようです。それって確実に前進してることだから素晴らしいです。英語を学ぶ明確な目的があるなら、語学学校のあとに大学に行くのはオススメです。
Podcast: Download (Duration: 29:09 — 13.4MB)