セブに行くと、全盲のサーリさんによく会う。彼は目が見えない。視覚障害者なんですが、生活をサポートするフィリピン人のヘルパーを雇って、毎年セブ留学しています。
障害者の世界は他人事だった
彼とはいろんな話をしました。25歳の時に失明した彼は、いまは52歳。もう見えない世界のほうが長い。失明後ポジティブになるのに11年かかったそうです。「時間が解決した」と彼は言うけど、自分が失明したらそう思えるだろうか?
いままで全盲の世界は他人事でした。障害者の標識は視界に入らないし、白杖(はくじょう)、点字ブロックも意識したこともなかった。だけど、彼と知り合ったことで障害者の世界を意識するようになった。東京では白杖を持っている人は案外多い。見かけたら声をかけようと思うようになった。サーリさんに教えてもらったように、横から声をかける。
「なにかお手伝いできることはありますか?」
厚生労働省のサイトも見たし、障害者年金をもらっている人がどれぐらいいるかも調べた。視覚障害者にも程度があって、完全に真っ暗な世界で生きる全盲の人は少ない。視覚障害は1級から6級まであって全盲者は視覚障害1級。平成28年の厚生労働省の資料を見たら、視覚障害1級者数は119,000人、65歳未満は26,000人でした。先天的な方ばかりでなく、事故や病気で視覚を失う人も多い。
全盲者が書いた3冊の本
確立は低いけど、誰もが障害者になる可能性はある。他人事じゃないと思って、アマゾンで「全盲」で検索して出てきた全盲者が書いた本を3冊読んだ。本を出すぐらいだから、普通の人じゃないと思うけど、すごい人たちばかり。みんなポジティブで活動的なんです。
もちろん、本にネガティブなことは書かないでしょう。だけど、彼らの行動力はすごい。サーリさんもいろんなことをやってるんです。フィリピン留学だけじゃない、サーフィン、ダイビング、音楽もやっているんです。
ダイビング?サーフィン?
「目が見えないのにサーフィンできるの?」
「目が見えないのにダイビングは楽しいの?」
毎回そんな素朴な疑問を投げかけていた。
彼をサポートしているヘルパーさんともいろんな話をした。ハンデキャップを背負いながら挑戦している姿に刺激を受けた。
印象的だった言葉
印象的だった言葉があります。
できることをできないと思われると困る。
手取り足取りしてもらうと、子供扱いされている気にもなる。
全部されてしまうと、自分でできなくなるから問題なんです。
でも、できないことをできると思われても困る(笑)。
必要以上に優しくしなくていい。同等に扱ってほしい。でも、困っていたら助けてほしい。
何かに依存すると依存することが当たり前になりがち。だけど、彼の発言にはプライドを感じた。
彼がはじめてセブ留学したのは2016年。その後、毎年セブ留学して英語学習を継続している。授業風景を見学したこともある。英語ペラペラとは言えないが、海外で生きていくには十分な英語力がある。海外でヘルパーを雇って、逞しく、そして楽しく生きている。
英語は確実に上達している。歩みをとめない人は強い。授業風景を見ていると、マンツーマンレッスンだから可能なんだと強く感じる。そして、障害者を受け入れてくれる学校があるから可能なんです。
障害者にやさしいフィリピン
セブ空港に到着すると、PWD: Person with Disabilityという文字が目に入る。フィリピンでは観光地にもスーパーにもプライオリティーレーン(Priority Lane)があって、年配の方、妊婦、PWD(障害のある人)は優先される。誰でも受け入れてくれるフィリピンの価値だと思う。
彼のように障害をおっていてもセブ留学できることがもっと認知されてほしい。海外留学は英語の勉強だけじゃない。生きがいにもなります。留学を通したいろんな価値があります。
英語勉強したいな、と思っているならフィリピン留学も1つの選択肢として検討してください。もちろん留学しなくても英語力は伸ばせます。AIやオンライン英会話など、自分にあった方法で1歩踏み出しましょう!
2016年にサーリさんにインタビューした記事は以下です。(取材:冨田)
視覚障害者の海外留学体験談!盲目でも諦めなければ英語留学できる!
サーリさんのイラストは僕が尊敬するイラストレーターのmikiさんです。