混淆へのパラダイムという本が面白かったので紹介します。フィリピンでビジネスをしていた方々が2004年に出した本です。書いたのは日比ビジネスクラブで、「学習会などを通してフィリピンを理解して日比の両方の貢献すること」を目的として10名の有志が手を挙げてスタートした組織です。結成した2001年10月から毎月講演会を開催していて、そのまとめとして2004年に出した本がこれです。20年前のフィリピンが詰まっています。
混淆(こんこう)とは、異種のものが入り混じることです。「混淆へのパラダイム」というタイトルも興味深いけど、検索性が低くくて時代を感じます。この本はもう絶版になっていますが、たまたま知り合いのオフィスで見つけて読みました。時代も感じられるし、勉強にもなった。面白かったです。
フィリピンでビジネスする時の注意点
12章まであって、いろんな専門家がフィリピンで活動する上での心構えを語っています。
- 第一章 フィリピンにおける資金運用について / 伊佐治稔
- 第二章 地獄の沙汰も金次第 / 坂本直弥
- 第三章 日本人事件簿 / 酒井善彦
- 第四章 こうすれば良くなるフィリピンの暮らしとビジネス / フレッド吉野
- 第五章 間違いだらけの住宅選び / 松本正
- 第六章 南国フィリピンの食彩とレストランビジネス / 加村清治
- 第七章 フィリピンに学ぶ / 西本至
- 第八章 これが、日系企業生き残りノウハウだ! / 望月義広
- 第九章 最速・日本語教授法〈KSメソッド〉で学ぶ / 川村悦郎
- 第十章 フィリピンに学んだ三〇年 / 高木妙子
- 第十一章 私の健康・長寿の秘訣 / 三木睦彦
- 第十二章 セブのご意見番が語る日比今昔物語 / 岡昭
目次だけ見ても興味深い。投資、節税、飲食、事件、不動産、日本語教育など幅広いです。今と同じようなこともあれば、全然違うこともある。
レストランビジネスの注意点は今でも参考になるし、従業員の子供の学費を払っているいい関係性を作っている経営者も今と変わらない。当時日本人は嫌われていたのは興味深いが、イメージなんて時間とともに真逆にもなり得ることをリアルに示している。
日本語教授法〈KSメソッド〉という勉強法も紹介されていた。日本語文章の単語を英単語に変えて話す勉強法で、なるほどなと思った。あと、怖いと思ったのはレイプは死刑ということ。冤罪だと最悪だから、女性と二人っきりになるリスクってありますね。
細部にこだわる日本人らしいストーリーが多くて、クオリティーに関する内容が多い。でも、いまの世代がこういう本を書いたら細部ではなくマーケティングよりの話が多くなりそう。
ビジネスとして即効性を狙う傾向は、グローバルで見た時の日本の良さを失っていると感じています。20年前の文章を見て、その変化が可視化されました。だけど、もう避けられないですね。
ビジネスだけでなく、文化や歴史的なことも学べます。新聞配達で1日10ペソ稼いでいる子供と一緒だった日本人の前に、「お金ください」という子供が現れる。無視していた日本人の横で、子供が5ペソを渡す。それを見てショックを受けたというエピソードもいかにもフィリピンっぽい。
現地に根付き、溶け込み、相手を尊重することが大切。いつでもどこでも同じですね。もう売ってないので読みたい人は図書館に行きましょう。