デ・ラ・サール・アンティポロ 学校見学レポート|フィリピン教育現場と日本との違い

マニラ郊外アンティポロにある デ・ラ・サール校(De La Salle Antipolo) を見学しました。アンティポロの都心から少し離れた場所にある、緑に囲まれた広々としたキャンパスです。日本の学校教員グループ「EDUCATION BRIDGE」の15名と一緒に行きました。

「デ・ラ・サール」という名前は、日本でも耳にしたことがある人が多いでしょう。お笑い芸人のラサール石井さんが通っていた「鹿児島ラ・サール学園」も同じラ・サール会の系列校です。

フィリピンはスペインの統治下にあったので、スペイン語読みの「デ・ラ・サール」。一方、日本ではフランス語読みの「ラ・サール」と呼ばれるようになったそうです。ラ・サール会の学校は世界中にあり、アンティポロ校もそのひとつです。

フィリピンのデ・ラ・サール校の特徴

マニラのマラテ地区には、1911年に創立されたデ・ラ・サール大学(De La Salle University, DLSU)があります。賢い金持ちが集まる大学として有名です。一方、アンティポロ校(La Salle College Antipolo)は1985年に創立された、幼稚園から高校までを対象とする総合校です。

1911年にマニラで始まったラ・サール教育は、ラ・サール修道会(De La Salle Brothers)が運営する男子校としてスタートしました。当時のカトリック学校は、男子校はブラザー(修道士)、女子校はシスター(修道女)がそれぞれの修道会によって運営されるのが一般的。男子と女子が同じ学校で学ぶことはほとんどなかったんです。

しかし、1970年代以降になると共学化が進み、デ・ラ・サール校も男女を受け入れるようになりました。アンティポロ校はその時代に設立されたので、最初から共学でした。

日本のラ・サール校との違い

一方で日本のラ・サール学園(鹿児島・函館)は、1950年代・60年代に設立されました。当時の日本は男子校・女子校が当たり前で、しかも女子教育はすでに別のカトリック修道会(聖心女子学院・雙葉学園・白百合学園など)が展開していたので、ラ・サール会は男子教育に特化しました。

その結果、日本のラ・サールは現在でも男子校を貫き、進学校としてのブランドを確立しています。東大や医学部への進学実績で名を馳せ、「男子だけで切磋琢磨する学びの場」という特色を守り続けているんです。同じラ・サール会の学校なのに、設立時期や社会背景が違うと全然違うのが面白い。

学校訪問レポート

学校見学は朝6時のピックアップからはじまりました。(朝早い!)アンティポロのホテルまで迎えに来てくれて、学校に到着したら大きな横断幕が用意されていてビックリ。大歓迎されました。

EDUCATION BRIDGE

応接室に案内されると、テーブルにはタイムスケジュールが置かれていて、朝食のサンドイッチまで用意されていました。手厚い!

アンティポロのデ・ラ・サールの訪問スケジュール

6時40分から3時30分までギッシリ!

カトリックの学校は祈りから始まります。

学校の説明があって、学校の方の挨拶が終わると、自己紹介タイム。

グループにわかれて授業見学

その後は、グループにわかれて授業を見学させてもらいました。

子供が駆け寄ってきて、どうしたのかと思ったら、サインを求められてました(笑)。

サインを求められる日本人の先生

最初に見学したのは文学の授業。授業も祈りから始まるんですね。

授業のテーマはスペイン統治時代のフィリピン文学。

文学のカテゴリーとして紹介されていたのが4種類。

  • 宗教文学
  • 世俗・非宗教文学
  • プロパガンダ文学
  • 革命文学

僕は学校で「プロパガンダ」って単語を聞いたことがない。国が変わると文学のカテゴリも変わるんですね。驚きました。

学校の先生たちは、僕とは見る視点が違いました。机やテーブルを見ても、「移動しやすいか」「食事がしやすいか」といった点に目がいくそうです。教室にあるすべてのアイテムを、無意識のうちにチェックしちゃうようです。

EDUCATION BRIDGEの先生は、Appleに認定されたApple Distinguished Educator(ADE)で、Apple製品を使って授業を行うスペシャリストなんです。だから、授業の進め方や、授業で使っているガジェットも見ていました。

だけど、フィリピンの学校現場ではApple製品もタブレットも使ってない。基本的に、先生が教壇で説明して、生徒が発言する。たまに、生徒をグループにしてディスカッションさせる。インタラクティブな授業と言っていたけど、昔の日本の授業スタイルでした。

次に見学したのは理科の授業。

生徒たちは集中して授業を受けていて、走り回ったり寝ている子は一人もいなかった。

ゲストが来ていた影響はあるにしても、それでも学ぶ姿勢は真剣でした。日本では「一方通行の授業では生徒のモチベーションが続かない」ようですが、一方通行でも生徒は勉強してました。

将来的にフィリピンでも日本と同じ課題が出てくるのかな。気になります。

学校環境と学費

気になる学費は年間12万ペソ(30.9万円)。フィリピンでは高額です。夜間課程は年間3000ペソ(7700円)で、試験に合格した50人ほどの生徒が通っています。

お金持ちの子どもが多いので、ほとんどの生徒が iPhone やタブレットを持っていて、学校のポータルサイトに、各自のIDでログインするとスケジュールや教材にアクセスできるようになってました。

デラサールのミッション

先生同士でディスカッション

見学が終わると、会議室に戻ってきて、先生同士のディスカッションです。事前に渡した質問に回答してくれました。

フィリピンの現状を教えてくれたあと、「日本ではどうなの?」と質問されるシーンもあり、有意義なディスカッションでした。

違う環境で働く人との交流って大事ですよね。

文化祭を全力で楽しむフィリピン人

それから、この日はたまたま文化祭だったんですよ。

フィリピン人の生徒たちは全力で楽しんでました。フィリピンに何度も来ている僕にとっては普通の光景だけど、はじめて見る先生たちは、子供たちのテンションの高さに驚いてました(笑)。

本気で応援して、絶叫して、優勝したら大喜び!

日本人は感情を隠しがち、だけど、フィリピン人は感情に素直に生きてます。

廊下ですれ違う生徒たちもみんな笑顔でフレンドリー。日本人の生徒はいなかったけど、日本語を話せるハーフの女の子が1人いて、通訳してくれました。みんなやさしかった。

僕がフィリピンで好きなことの1つに、知らない人でも笑顔で挨拶するんです。日本で知らない人に笑顔で挨拶されたらちょっと怖いでしょ。日本とフィリピンを行ったり来たりしている僕は、日本に帰ってくると日本モードに切り替えます(笑)。

学校見学を終えて

訪問を通じて、日本とフィリピンの教育の違いを体感できたことに価値を感じました。どちらが優れているかではなく、異なる教育の現場を知ることが先生自身の視野を広げ、生徒の学びにつながると思います。そして何より、生徒の笑顔のために尽力する先生の姿勢は、国が違っても共通だと強く感じました。

デ・ラ・サール・アンティポロ校 学校見学

学校見学はこれで終了!

夜にはみんなでお酒を飲みながら、感じたことをシェアしたんですが、その時間も楽しかったです。予想外だったのは、毎晩3時ぐらいまでお酒を飲むことでした(笑)。飲む量も半端ない!

引き続き、別の学校訪問の様子をレポートしていきます。

(2025年8月8日訪問)

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中谷 よしふみ

エンジニアベースの元コンサルタント。2012年にフィリピン留学を体験。自身の体験をシェアするため、このサイトを作ると、サイトが有名になり、学校に呼ばれるようになる。体験した学校は100校以上。いろんな学校を体験すると、ほとんど同じだけど、一部の学校は全然違うことを知る。業界で一番詳しい自信を持った、2016年に「英語はフィリピンで学べ」という書籍を出す。TOEIC845(リスニング450、リーディング395)。年間半分以上は海外で生活しているノマドクリエイター。英語を身につけて日本から出て視野を広げてほしい。そんな思いでエージェントをやっています。

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